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【B#45】表現すること(2)〜ピクサーと創造性

2016年12月9日〜12月20日まで、ロルフィングのトレーニングと自分軸セミナーを開催するため、ドイツ(フランクフルト、ライプツィヒ、ミュンヘン)に滞在した。飛行機、電車移動を含め、30時間近く費やしたことになる。
今回、帰国の便でビジネスクラスを利用したこともあり、航空内での映画をチェック。そこで、「アンと雪の女王(Frozen)」「ぺット(The Secret Life of Pets)」の2つの米国アニメ作品をみることができた。
アニメについては、ジブリ・アニメを中心によくみており、関連本を手に取っている。例えば、本コラムでは株式会社KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長の川上量生氏がスタジオ・ジブリへ弟子入りした際に学んだ「コンテンツの秘密〜ぼくがジブリで考えたこと」を紹介した(「表現すること〜クリエイティブとプラットフォーム」参照)。
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アニメの世界で国際的に何が起きているのか?ピクサーを含め、アニメの状況ってどうなっているのか?コンピュータがどこまでアニメの世界に浸透しているのか?ストーリーを作る上で、どのような工夫をし、クリエイティビティを大事にしつつ、組織を作っているのか?等、個人事業主として学ぶことがあるのではないか、と考えている。
考えるきっかけとなったのは、数年前に出会った一冊の本、エド・キャットムル著:「ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」だ。
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今回原書版(「Ed Catmull and Amy Wallace: Creativity Inc. – Overcoming the Unseen Forces That Stand in the Way of True Inspiration」)
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を改めて再読した。
ピクサー社の創業者の一人のエド・キャットムル氏がフル・コンピュータ・グラフィックス(フルCG)を使ったアニメを作ることを1970年代に目標を掲げ(これ自体凄いですが)、どのようにして夢を実現させていったのか?から始まり、研究機関(ユタ大、ニューヨーク工科大)を経て、縁があり1979年にルーカス・フィルムのコンピュータ部門(やがてピクサーと呼ばれるようになる)。後にディズニーからクリエイティブ部門の責任者のジョン・ラセターが組織に参加することになる。
残念なことに、1983年にジョージ・ルーカスと(当時妻だった)マーシャ・ルーカスが離婚することで、資金繰りに問題を抱えるように。そこで、ピクサー買収先を探すことに。紆余曲折を経て1986年にスティーブ・ジョブスの資金が入り、ピクサーとして独立していく。
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1995年にToy Storyができるまでどのような経緯でジョブス、キャットムル、ラセターが協力しあって組織文化を作っていったのか?どのようにしてヒット作を生み出すための組織づくりを行ったのか?わかりやすく書かれており、400ページをあっという間に読むことができる。
中でも、キャットムル氏からみたジョージ・ルーカスやスティーブ・ジョブスは、世間から見られているイメージとは異なっているところが面白い。スティーブ・ジョブズについては、最終章で人柄について書かれており、いわばキャットムル氏のジョブズへのラブレターに近い形をとっており、ウォルター・アイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」の伝記とは趣の異なり、暖かい味方になったということが述べられているのが意外だった。
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そこで書かれたジョブスのことの中で気になったのは、
1)ジョブズのイニシアティブによって、ピクサーの建物をオープン・スペースにデザインしていったこと。何故ならば、Creativityというのは、人々との会話や情報共有などの偶然の出来事によって生まれ、孤独作業によって生まれないことを熟知していたこと。そして、仕事が捗るためにも。
2)うまくいかなかったことに対してすぐに考えを改めるということがあったこと。
3)人との繋がりを元にストーリーを作り上げる大切さをよく知っていた(これは、アップルでのプレゼンにも繋がっていく)
4)ジョブズは、人間的に成長していくに伴い、他人の感情に対して感受性が増すようになったのみならず、創造性を発揮するプロセスに良いてもその価値を認められるようになった。
等のようなことが書かれている。
クリエイティビティを発揮する上でもピクサーが大事にしている考えも参考になる。
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例えば、
1)ストーリーが王様、技術ではない。そして仕事のプロセスを信じること
2)優秀な人材は働く人たちとの相性が重要。良いチームはお互いに相補する関係。そして、人間からアイデアが生まれるので、人はアイデアよりも大事。
3)批判と生産的な批判には違いがある。生産的な批判には、壊すのと同時に作り出すということが含まれている
4)正直に考えを言うのは難しい。しかし創造性を発揮する会社にには必須。そのために信頼関係が大事。ピクサーでは、Braintrustという形で結晶化。
5)失敗を経験していない場合には、さらにもっと過ちを犯している可能性がある。というのも、失敗を避けようとしているから。リーダーとして大事なのは、スケープゴートを探すのではなく、チームとして間違いを認めること。問題に対して、オープンになること。
6)変化と予想は難しい。変化した際の対応力を身に付けること、各々社員のOwnershipを大事にすること。
7)恐れへの解決策は信頼。信頼するということは、間違いを犯すことを信頼することではなく、犯したとしても信頼するということ。
8)素晴らしいアイデアというのは脆弱(Ugly babiesと表現)。成長・成熟するのに時間と忍耐が必要。
9)企業では、偶然や運によって左右されることが多い。大切なのは、一人一人の社員がどの地位に置かれているにしても、オーナーシップを発揮して自分で問題解決をできると信じさせること。
等。
アニメを作るプロセスについての事例も豊富なので、ものを作り出すという意義についても学ぶことができる。クリエィティビティについて興味を持っている方に勧めたい一冊だ。
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