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【B#159】3つの学習法〜困難学習、地形学習、交互学習

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

東京大学薬学部の池谷裕二教授の本は、同教授が助手だった頃から、よく読んでいる。新刊(2024年3月28日・発売)の「夢を叶えるために脳はある「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす」が出版。今流行りの人工知能と脳と比較しながら、脳の働きについて迫った野心作で面白かった。

過去に、同書の「見る」を学習するために必要な身体の動きについて、興味深いことが書かれていたので、紹介した。今回は、学習を定着するための3つの方法について、面白かったのでまとめたい。

3つの学習法とは?

池谷氏によると、脳の記憶の定着に重要な学習法には、
1)困難学習
2)地形学習
3)交互学習
の3つがあるらしい。

池谷氏の本の内容に沿って紹介したい。

困難学習とは?〜学習はつらければ辛いほと定着する

困難学習とは、困難が伴うと、一見遠回りに見えるが、最終的によく記憶に定着するというもの。例えば、目で見て覚えるより、手で書いて覚える方が効率的。なぜならば、入力(「見る」)よりも、出力(「書く」)の方が定着するからだ。参考書を読むよりも、問題集で答えを出していく方が学習効果が高いと同じ。

読みにくい文章と読みやすい文章も差があるらしい。グループを2つに分けて、一方のグループはそのまま文章を読む。もう一方は、文章に細工をする。文章がシャッフルされていて、文脈が飛ぶので内容を追うのが難しい。2分で読めるのが、10分以上かかるように。

驚くべきことに、読みずらい文章を手渡された方が、文章の内容のテストのスコアがいいのだ。

地形学習とは?〜問題の周辺情報を重点において学習する

体育の授業で90センチ離れた位置から「玉入れ」をするカゴに玉を入れるテストを考えてみよう。そのテストを行う際に、2つのグループに分ける。一つは「位置学習」のグループで、もう一つが「地形学習」のグループ。

「位置学習」は、90センチの試験なので、90センチから投げる練習をひたすら行う。「地形学習」は、90センチの学習は一切行わず、60センチと120センチの練習を交互に行う。すると「地形学習」の方が、成績がいい。本番で失敗する回数が半減するらしい。

2つの距離からの練習は、2点以外のこと、いわば、その背景にある「地形」まで習得することができるのだ。面白いのは、国語、算数などの学習についてだが、最初のうちは「位置学習」の方が成績がいいらしいが、やがて、「地形学習」が追い抜く。いわば、困難学習の要領と一緒で、困難を括り抜けることで、力がつくのだ。

交互学習とは?〜情報のシャワーを浴び、理解する前に切り上げる

交互学習とは、勉強する順番が重要ということ。西洋絵画で、エドゥアール・マネ、クロード・モネ等、一つずつ画家の作品・作風を集中的に学んで、次に進む方法。これが「ブロック(単元ごとに)学習」と呼ぶ。

一方で、単元横断的に、単元を跨いで勉強する。これを「交互学習」と呼ぶ。一人の作家の作品を学んだ後、すぐに次の作家へ進むような感じ。そしてテストすると、なんと、交互学習の方がブロック学習よりも好成績を残すらしい。

本来、「ブロック学習」の方が、「勉強した!」という実感、達成感があるという。一方で、「交互学習」の場合は、理解したのかわからない、消化不良になるので、フラストレーションが溜まる。本当に勉強になったのか?不安になる感じだ。

ここがポイントで「わかった」という感覚は、実は学習を停滞させる。なぜならば「わかる」という感覚は知識欲を減退させ、短絡的な理解と思考停止へと導く。要は、学習する際は、わからないまま、モヤモヤしながら、前進していくのが効果的ということ。

実際の学習に応用する際はこうだ。勉強した時に、いよいよわかりそうな糸口が見つかった時に、勉強をやめる。そして、別の科目へ進み「わかった!」となる直前で止める。これが交互学習の醍醐味だ。

人工知能〜3つの学習法

現在、人工知能が注目されているが、機械学習(ディープラーニングと呼ぶ)だ。機械学習とは、データを分析する方法の一つで「機械(コンピュータ)」が自動的に「学習」し、データの背景にある、ルールやパターンを発見する方法だ。なんと、機械学習は、1979年、NHK放送科学基礎研究所(現NHK放送技術研究所)の福島邦彦さんによって考案された。

福島先生が「機械学習」を思いついたのは、脳の視覚回路が多層構造になっていることに注目。哺乳類の後頭部にある視覚回路とカエル、魚類の網膜を融合させて作り上げたらしい。

せっかく「機械学習」を考案したのに、問題が3つあった。
1)コンピュータの処理能力が低かった
2)機械学習させるためには膨大なデータが必要
3)上手に教えることのできる教師や学習法が必要

このうち、1)と2)は、コンピュータの技術の発展により解決したが、3)は、先ほどまとめた、3つの学習法によって、2012年に解決したのだ。学習法として、YouTubeの画像、1000万枚をランダムに与え続け、訓練させる。その結果、トマト、ペン、ネコなど、2万種類の物体を写真から認識できるようになったらしい。

まとめ

今回は、前半に、記憶を定着させるための3つの学習法について紹介した。後半は、学習法が人工知能に応用されていることを中心にまとめた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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