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【J#75】関西の旅(6)〜民俗学博物館を訪れて〜世界のガラクタを知る〜自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の頭で考えること

2020年10月9日(金)、ソースポイントセラピー(SPT)のトレーニングを3日間終えた段階で、1日休みが入った。
あいにく、関西地方に台風が接近中で大雨で、外出するのはどうかと思ったが、せっかくの関西。どこかへ観光をしたい気持ちがあった。

そこで、初日以来の観光として(初日は奈良へ行った(「大神神社と春日大社を訪れて〜過去2年住んだ奈良を満喫した」参照))、室内で楽しめる場所を考えた末、万博記念公園の中にある国立民族学博物館(以下みんぱく)へいった。
背中を押してくれたのは、前日、私がトレーニングを受けている時に妻の亜希子がみんぱくにいき、感激したそうで、私に勧めてきたことだった。

大阪モノレールで万博記念公園駅へ。太陽の塔を見渡しながら、歩くこと10分、みんぱくに到着した。
実際、訪れてみると、世界各地の日常品が1週間かけてようやく回れるぐらいの規模で展示されており、内容に圧倒された。5大陸のすべてがカバーされており、各地域の文化を疑似体験。まるで世界一周しているかのような錯覚に囚われてしまった。
2週間前に島根県の足立美術館に行ったが、これに匹敵するか、それ以上のものの雰囲気を感じることができた(足立美術館の模様については「日本一の庭園を持つ足立美術館と松江城近辺を散策」参照)

何がいいか、というと、日常生活に関わるもの(楽器、洋服、食物を含めた日常生活品)が展示されていることもさることながら、民族学を本当に愛している人が展示していることを強く感じたことだった。
あまりにも素晴らしいので、思わず関連する本をショップで購入した。これも、足立美術館以来だ。

その中の1冊「梅棹忠夫:知的先覚者の軌跡」には、みんぱくの作った経緯について初代館長だった梅棹忠夫さん(以下梅棹さん)の考え方が書いてある。
梅棹さんの考える博物館とは?
「博物館は、知識、情報を蓄積し、それを伝達する装置だ」
だという。
その上で、どのようにして世界一の博物館にしていくのか?何を揃えるのか?
梅棹さんが、世界中のフィールドワークを経て得た結論は、
「みんぱくの収集するのはガラクタ」
だった。

要は、みんぱくは華麗な美術品や有形文化財を集めるのではなく、世界の諸民族の生活用品=ガラクタを集めることに集中し、展示。日用品のガラクタによって組み立てられる大衆文化の中にこそ、明日が読み取れるという、梅棹さん独自の文明観・思想が根底にある。
面白いのは、すでに1970年の大阪万博の時に2,600点に及ぶ民族資料を収集していたことだ。それがベースとなり、みんぱくの展示へと繋がったのだ。
すごいと思うのは、経営手腕だ。
梅棹さんは、海外で学術調査を行なっているが、第二次世界対戦の敗戦の直後の50年代、公的資金が得られ難かった。そこで、新聞社、放送局、マスコミなどから資金を調達して、研究活動に生かしている。
この経験がみんぱくを作る際にも発揮され、みんぱくの展示を含め適材適所に人材を配置し、フェアに研究を評価できる仕組みまで取り入れている。

こういった発想で作られたみんぱくは面白いに違いない。やはり、哲学って大事だと確信できた。
せっかくなので梅棹さんの本について紹介したい。梅棹さんは文章がわかりやすいのが定評で、素人にもできる限りわかりやすいように伝えるところに特徴がある。
ボディワーク にも参考になる箇所が多く、ロルフィングのセッションを提供した今でも、ヒントになる。
一番のおすすめは、晩年に梅棹さんの本音を聞き出した「梅棹忠夫・語る(聞き手・小山修三)」だ。

この本では、梅棹さんの発想法が書かれており、参考になる。
例えば、
・どんなに偉そうなことを言っても、そんなもの、全部、すでに本で読んでいるわけです。だから所詮それは受け売りだ。
・私は、ある意味で不勉強で良かったのだと思う。あまり他人の書いたものを一生懸命、読んでいない。一応読んではいるけど、それほど没入することがない。自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の頭で考える、これが大事や。他人の書いたものを信用していない。
このような姿勢がみんぱく作りへとつながったと考えると、面白い。

面白いのは、梅棹さんは、教師という職業は好まなかったことだ。教師は体制的権威に裏打ちされた仕事であり、自分にわかり切ったことを、教師と学生という上下関係で一方的に伝達するからだという。
特に権威を嫌い、本質に迫ることを楽しんだ梅棹さん。
梅棹さんは、若手を育てることを熱心に行なっていたが、「梅棹サロン」や「金曜サロン」という今でいう「オンラインサロン」を作り、生徒と先生の関係としてではなく対等に付き合った。
私も、オンラインサロンで同じような試みを行いたいと考えているので、梅棹さんから学ぶことが多い。
「探検とは、未知のフィールドに挑み、自分の身体を使って、新しい情報を集めていくることである」
「発見というのは突発的に出てくるもの」
などの梅棹さんの言葉を聞くと、こちらのモティベーションも上がる。

今回、みんぱくへ行ってインスピレーションを得ることがあったので、明日からのSPTのトレーニングに臨むにあたってもヒントが得られたように感じている。

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