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【B#42】表現すること〜クリエイティブとプラットフォーム

前回ほぼ日を通じて企業文化について興味を持つようになったこと。そして、グーグル社について手に取った本を中心に企業文化について考えた(「企業文化について考える〜グーグル社とスマート・クリエイティブ」参照)。
私がIT業界で、もう一人注目しているのは株式会社KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長の川上量生氏だ。
ニコニコ動画を立ち上げたこと
社長業を営みつつスタジオジブリに2年間弟子入りしたこと
「人工知能が「何ができないのか?」」
という一見変わった問題意識からと、ご自身の勉強用(?)のために「ドワンゴ人工知能研究所」を作ったり(「人工知能にできないことを知るために研究所を作った」、共著「羽生さんはコンピュータに勝てますか?」)
と、取り組みが興味深い。
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それだけではなく物事を言語化するのがうまく、IT業界やプラットフォーム、コンテンツ等について知る際に色々と得られるものが多い。
川上量生氏の著作から興味深いと思ったことを拾っていきたい。
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まず、ジブリに弟子入りした際のエピソードを語った「コンテンツの秘密〜ぼくがジブリで考えたこと」より。
クリエーターとは
「ある制限の元で何かを表現すること」
であり「ある制限」というのがメディアと紐付いたコンテンツ。
そしてコンテンツとは
「現実の模倣=シミュレーション」
であると明確にわかりやすく語っている。
そこから、コンテンツの性質を表す基準(情報量の多寡)やコンテンツが心を動かす秘訣などについて話題を展開。
基準の一つとして、主観的情報量と客観的情報量を取り上げている。前者は、人間の脳が認識している情報量で、後者はアニメの線の数からコンピュータの画素数まで、客観的基準で測定できる情報量を指す。
実写の場合には、客観的情報量が多いため、脳で無駄な情報を捨てる。その結果、残った情報量はアニメのものよりも少ない可能性があるという。それが脳で認識できる主観的情報量。実は、宮崎アニメは、脳の理解しやすいような絵(情報量)で表現されるから、心に響くという。
次に、ニコニコ動画やIT業界について語った「ニコニコ哲学〜川上量生の胸のうち」より。
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まとまりがなく、箇条書きになってしまうが・・・。
1)コンテンツというのは、プラットフォームではなくメディアに紐付いている必要がある。コンテンツ市場も成熟していくと、コンテンツそのものではなく、ブランドが評価されるような世界になる。その典型例がゲーム。
2)最終的にプラットフォーム競争が起こる。あえていえばそれはディスカウント競争。コンテンツそのものの値段が下がって消費者にアピールするか、クリエイターの配分比率を上げて、クリエイターにアピールの二者択一へ。新しいプラットフォームが力をつけると、コンテンツの値段が上がり、クリエーターの配分比率が下がる。
3)クリエイターが増えても、クリエイティブが今以上に豊かにならない。むしろ、クリエイターが増えるほど、作品の多様性が奪われていく。なぜならば、何がが流行るとそれ一色になっているから。ゲームの世界が顕著で、人気タイトルの続編ばかりが出来るのは、競争相手が多いから。逆に、スタジオジブリは競合がいないから、独自の作品が出てくる。
4)最近のメディアの批判能力が高すぎて、いいことをしても批判されているところがある。ニコニコ動画には思想を持ち込まないことを心がける。「何もわからない」というスタンスで情報を平等に垂れ流すこと、これはテレビ業界の初期の頃に起こったこと。
5)Appstoreには、クリエイターがブランドを貯めるための仕組みが、プラットフォームの中に入っていない。そのため、クリエイターはゼロからの競争を強いられる。なぜならば、AppstoreでPRするためには、ランキング上位に入ることぐらいだから。ブランドを貯める仕組みがないと、コンテンツホルダーが弱くなる。
6)才能とは希少性のこと。
7)才能レベルがとても高くても、競争相手が沢山いるジャンルは大変。プロ野球等。人間の能力というのはある程度まではみんな同じところまで伸ばせる。そこから薄皮一枚分だけ抜けた人が天才と呼ばれる。
8)インターネットは多様性がなくす。国ごとの多様性が失われていく、グーグルやフェイスブックとか、グローバルなプラットフォームが国家みたいな権力を持つと、究極の選択に。政府に統治されるのか?グローバル・ITに統治されるのか?か、グーグルやフェイスブックは個人情報を守ってくれない。グローバルのプラットフォームとローカルの政府だったら、ローカルの方が国民のために何かをしてくれる。例えば、アメリカと日本と比べると、日本の方が住みやすい。保険制度も年金制度も日本の方が100倍いい。
9)人間の脳って、パターン認識しているから、基本直感。それを論理で説明することの方が、不自然。人間が論理的に考える行為って、一度パターン認識したものを、論理で再構築している作業。それは、人間が作る論理は直感を超えたものになりにくい。
10)人間の脳に論理が組み込まれていない。文系の論客は言葉は道具だと考え、論理を手段として使う。そして理系は、論理的に正しいことは何なのか?に興味を持つ。文系的な態度が間違いで、理系的態度が正しいかというと、必ずしもそうとは言えなくて、実社会においては、むしろ間違っているのは理系的な態度かもとも思っているんですようね。そもそも、そういう何らかの先入観や思い込みのない客観的な状態で、議論を組み立てることが可能か?という問い。
11)理系:議論の前提が厳密に定義。だからその上で精緻な論理を構築できる。イデオロギーの本質は知識の体系化。ある価値観において、世の中をエミュレーションするもの。MBAは、資本主義の価値観の元に世の中のビジネスはこうあるべきだと説明する知識の体系を教える事。
12)新興宗教、正しい・正しくないにもかかわらず、論理が集合すると世の中のほとんどの事が説明できて、それが力を持つという事の表れ。
いや、IT業界のみならず、人間の本質をつく本なので本当に興味深い。
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