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【B#23】ロルフィングについて(1)〜お客さんにロルフィングを説明する際にオススメの本

ロルフィングのセッションをセッションルームを借り、提供するようになってから1ヶ月。初めて体験する人たちにどのようにロルフィングについて説明するのか?スライドを交えてお伝えしているのだが、言葉で伝えることの難しさを日々実感している。
私がロルフィングという仕事を知ったのは、2冊の本と出会ってからだ。能楽師の安田登氏の「ゆるめてリセット ロルフィング教室」や身体論者の藤本靖氏の「身体のホームポジション」の2冊。
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その後2013年の12月23日、イタリア在住の友人の結婚を祝うパーティに参加したときに、ロルフィングの施術を行うロルファーの一人、伊藤彰典氏と出会うことにつながっている(【RolfingコラムVol.1】参照)。
両者の本は随時チェックしており、各々の最新刊である安田登氏の「日本人の身体」と藤本靖氏の「感じる力を取り戻しココロとカラダをシュッとさせる方法」を読む機会あった。
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安田登氏の本では、日本人の身体観を歴史的な観点から述べている。日本人にとっての「膝」とは、膝頭から腿の付け根、太ももの前側全体、「肩」とは、肩峰から首のあたりまでを全部ひっくるめて肩と呼ばれていた。解剖学的な膝頭や肩峰というのは、ポイントとしての身体を見るのに対して、「おおざっぱさ」が日本人の身体言語の基本だといえる。
そして、現代は西洋医学が主流になった結果、病名や怪我の名前を含め細分化が進んでいる(昔は、風邪とインフルエンザや下痢と過敏症腸症候群との違いはなかったという意味)という。例えば「肉離れ」。一つのネーミングによって引きづられてしまい、身体をどのように感じるか?という観点が忘れられ、「肉離れ」の治療のみが始められる。結果として今目の前にある「その人の足」という個別的状況が忘れられてしまう。
このように「自分の身体をどのように感じるか?」という観点を疎かにし、他人や客観的なものに任せてしまうというのは、日本の歴史からみると新しい感覚。
元々日本語の「からだ」というのは死体という意味だったそうだ。生きている身体は「み(身)」と呼ばれ、考えも心と魂が一体だったという。やがて生きている身体が「からだ」と呼ばれるようになり、からだが自分自身から離れ対象化されるようになる。対象化されることで、専門家である他人の手に委ねるという考えに行き着くという。日本語を追うことで身体をどのように見ているのか、知れて興味深い。
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それは、「からだ」の語源である「殻」のように、自分と周囲に強固な境界を設け、他人との壁を設ける。他人との境界が曖昧であれば、人の苦しみが我が苦しみであり、人の喜びは我が喜びであると考えることもできる。「身(み)」と「からだ」の考えを含め、身体に対する日本史からの見方を知る上で安田氏の本は勧めたい。
もう1冊目は、藤本靖氏の本だ。発売されたばかりの本だが、「身体のホームポジション」から更に深化が進んでおり、とにかく無駄なものが省かれておりわかりやすい。自分自身文章を書く難しさを日々実感しているので、心が動かされるようにすぐに読み終えてしまった。
その内容の一部を紹介したい。
安田氏が述べた「身体の感じる力」が弱まっているということを人間がみんな共通に持っている、「神経の働き」という具体的な能力という科学的な観点から言及。その「神経の動き」をほんのちょっとした工夫でどのように活性化することができるかどうかについて書いている。アレクサンダーテクニックでは、頭と脊椎を緩めるということ重視するが、それを一番最初に述べるところがいい(アレクサンダーテクニックとロルフィングの違いについては、【RolfingコラムVol.85】【RolfingコラムVol.90】参照)。そして、それを手助けをするアゴ・ワーク。割り箸を奥歯の間に挟むというシンプルなもの。それで全身の力が抜けていくというのは、驚くべきことだと思う。

そこからその理由を探求する過程で、神経の仕組みへと話が進むが、アゴを緩むことによってなぜ、全身がゆるんでいくのか?の際に取り上げる筋膜という一つの言葉を取り上げる。その意義についての説明もわかりやすい。筋膜というのは

  1. <スペースを作ること>筋肉や内臓の包み紙であり、臓器が安定して働くことができるための空間(スペース)をつくること。
  2. <つながりを作ること>臓器同士をつなぎとめるという働きをしていて、身体全体を一つに取りまとめるという働きをすること。

となる。ドイツで受けたロルフィングのトレーニングでは、どちらかというと、<つながりを作ること>よりも、<スペースを作ること>の方が重視されたいたと思う。本コラムでも触れたように、ロルフィングはスペースをどう作るかが大事だとGiovanni先生は言っていたからだ。それは、ロルフィング・トレーニングで関節をjointではなく、Articulationという言葉をわざわざ使っているところに現れていると思う(【RolfingコラムVol.36】参照)。もともと、articulationという言葉は、「繋ぐ」よりも「空間」や「間」を意味し、文章に「間」をもたす、動詞のarticulate(明確にする)の派生語もある。そこから、Articulationは、空間=スペースという意味にもなる。スペースの大切さを伝えるために意図的に伝えているということは【RolfingコラムVol.16】で触れたが、
身体内にスペース(空間、articulation)があることに意識を向ける(英語でevoke)ことで、余計な筋肉の力が抜けていく
ということをトレーニングでは強調。ロルフィングにおける2方向性の考え方もこのスペースという考えから派生している(詳しくは、【RolfingコラムVol.19】参照)。

そして、筋膜を最大限に力を引き出すための使う、呼吸。藤本氏は身体への意識を高めるためには身体に触れるのみならず、「呼吸を感じること」が大事だという。その際に、意識を向けたい場所に対して、
「自然な呼吸の波が⚪︎⚪︎に届くと思う」
というのが有用らしい。藤本氏のご経験から、「呼吸を意識する」という言葉は頑張るにつながり、筋膜へのスイッチは強すぎ、「呼吸をイメージする」という言葉は脳内の反応だけになってしまうため、弱いとのこと。そこで最終的に「〜思う」という言葉に辿りつたという。
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呼吸はロルフィングでは1回目のセッションから、呼吸筋を中心に見ていったが、言葉を使いところまでの深堀りはしていない(呼吸とロルフィングとの考えについては【RolfingコラムVol.62】で、トレーニングで配布された論文に基づいてまとめた)。
他に書きたいこと思うことはいろいろとあるが、提唱されているワークは実戦向きで私もセッションに取り入れたいと考えている。
上記の2冊は、私にとって今後どのようにロルフィングを説明したらいいのか?学ぶ上での貴重なテキストにもなり得るもの。これからも、自分の手元に置いて何度か読んでいきたいと思う。
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