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人に向かわず天に向かえ 篠浦伸禎 2冊目

現在、脳科学はブームである。私も昨年だけで、100冊以上、脳関連の本を読んでいるが、はたして脳科学の知識って本当に役立つのか?もちろん、そうは信 じたいと思うのだが、あまりにも細分化されている(これは、脳科学に限らず、他の生物の世界もそう)ので、サイエンスをある程度経験した自分自身の目から みても(脳は専門外だが)、わからなくなることがある。
何冊か脳の本を読んで感じるのは、実生活にどう役立つのかを、専門家と非専門家の二つの視点から、脳についてアプローチしていることを感じる。
1)研究者が今脳科学で何が起きているのかを論文ベースで紹介しながら、実生活でどう適応するのかを見た本池谷裕二氏や久保田競氏の本が一つ(脳の構造から実生活とどう結び付けるのかを詳細に記していてすごく面白い)
単純な脳、複雑な「私」/池谷裕二

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バカはなおせる—脳を鍛える習慣、悪くする習慣/久保田 競

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2)自己啓発と脳とを結びつけた本(たとえば、記憶術と脳を結びつけた小田全宏氏の本)
幸運脳をひらけ/小田 全宏

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が上がってくると思う。
それとは、また別のアプローチ。すなわち、古来から伝わる古典から人間がどう生きるべきかという人間学からのアプローチと脳がどう関連するのか?を見た本が今回紹介する篠浦伸禎の「人に向かわず天に向かえ」である。
この本は、親しくしている友人の一人から紹介していただいた。
脳幹(人に向かわず天に向かえ (小学館101新書 18)/篠浦 伸禎

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脳外科医の篠浦氏は、豊富な臨床経験をもつ。その過程で人間学に興味を持つようになってきた。というのも、入院患者に対して、脳の知識だけでは不十分で、人間学の書かれた本を渡したところ、わずかではあったらしいが、病状の改善が認められたからだ。
人間学は、篠浦氏によると、
「人間が平和に安心して生きてい行くために、自分の能力をどう生かしていけばよいかを示した学問」
と定義している。そこで、人間学はなぜ役立ったのか?それを今まで脳外科医として培った経験から脳の知識と結び付けてこの本では解説している。
人間の脳は、解剖学から脳幹、小脳、大脳、の三つの部位からなる。脳幹は、呼吸や心臓の鼓動などの基礎的な機能を担い、小脳は手足、筋肉、体の知覚などをつかさどる。そして大脳は、言語、感情、記憶などがかかわっている。大脳は人間の80%を占める。
大脳はさらに、大脳新皮質と大脳辺縁系の二つよりなり、大脳新皮質は感覚や知覚、そしてその内側にある大脳辺縁系は本能的な情動をつかさどる。
大脳辺縁系は本能(食欲、性欲)、情動(快感、恐れ)に関する機能が集まっているため、いわば自分を守るための機能、すなわち自己中心の脳、私脳といえる。
一 方で、大脳新皮質は、人間らしさを示す部位として知られ、これは感性(想像力、発想、音楽など)をつかさどる右脳と論理(読む、書く、論理、数字)をつか さどる左脳からなっている。たとえば、右脳で他人の気持ちを察し、左脳で論理的な決断をする。ときには、危険を冒すことを承知の上で、弱い者を助けるとい うアクションもあるため、公に行動する、公脳でもある。
ということは、脳の構造からして、自分の保身で動く私脳と他人のことを考えて行動する公脳の二つが同居したいわば矛盾の存在ということがいえる。
そこで、昔の人たちは、こういった公と私をバランスを取ったらいいのか?また、公脳でも、合理性を追求するのか、それとも思いやりを追求したらいいのか?といった側面がテーマとなる。
渋 沢栄一は、「右手に論語、左手にそろばん」といったのは情感と合理性のバランスの重要性をうたったし、よく人間学で取り上げる、「志」は、ある目的に対し ていかに自分を律するか、そしてそのために努力しているかということがあげられる。このように昔から人間はあたかも人間の脳の構造をしっているかのよう に、重要と思われることを取り上げて来ていて本当に興味深い。
なんといって、面白いのは、私脳の満足を満たしたとしても、一瞬であること。しかしながら、公脳の満足は長続きすることも脳の構造からわかっているので、公に徹する生き方は共感を呼ぶこと、そして人間の脳にとってもその生き方がいいということが分かっていることである。
論語については、彼は別の本で取り上げているので、興味があったら是非一読をお勧めします。
脳は『論語』が好きだった/篠浦 伸禎

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